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2012年8月30日 (木)

何をすべきか~「日本の雇用」大久保幸夫著から 【仕事・産業】

労働相談を担当していて、労働問題を解決するため、あるいは未然に防ぐために何をすべきかということを考えていて、労働とか雇用とかつく本を手当たり次第(遅読なので手当たり次第というより、ボチボチという感じですが)、読んでいます。

迷っている話は最近、書いたのですが・・・
迷い~雇用、労働問題をいかに解決するか

雇用とか労働とか名称がつく本は、溢れるほどありますが、経済的な視点に偏っていたり、法律的な視点に偏っていたりで、一人の人間が働いている中で出てくる問題にどう向き合うかという視点で考えるときに、一冊でぴったりくるものがないように感じます。
本の多くが研究者や専門家によって書かれていて、経済・経営と法律に分かれてしまうということがあるからだろうと思います。

そんな中で大久保幸夫氏が書かれた「日本の雇用~ほんとうは何が問題か」は、しっくりくるものがあります。

本の中の第2章、日本の雇用対策について疑問を呈した「日本の雇用対策に関する3つの不思議」の1「なぜ直接雇用を創り出そうとするのか」は、まさしくそうだなと。

「不況によって雇用の場が縮小するから、新しい雇用を創り出そうと考えるのは、至極まっとうな考えであるが、雇用はあくまで生産の派生需要であることを忘れてはならない。
経済活動の必然性から雇用ニーズが生まれるのであって。経済の活性化を経ずに、直接に雇用を創り出そうとすれば、必ずそこには無理が生じ、予算が非効率に消化され、さらには副作用が出てくる。このようなきわめて単純な話がなぜ理解されないのか?私は不思議でたまらない。」

これは戦後の混乱期にはじめられた「失業対策事業」から来ていて、その当時は合理性があったかもしれないが、現在はそうではない。しかし、不況のたびに同じような政策が繰り返されてきたとも書かれています。

「もともと特段必要がない事業を、雇用の場をつくるために、無理矢理行うわけで、なかには有効な事業もあっただあろうが、多くは、成果をたいして期待しない事業であったはずだ。失業者を雇用して短期間だけ使うのだから、委託された民間企業も難易度の高い仕事はさせられないし、仕事の質を厳しく求めることもない。それでは雇用された人々の仕事に向き合う意義も高まらないし、職業能力も高まらないのは当然である。
金の切れ目が縁の切れ目。委託事業が終われば雇用は終わり、また失業者となって一から就職活動をはじめるしかなかった。
成果を期待されない仕事ほどつらいものはない。動けば動くほど働く意欲を失っていく、そのような仕事になってしまう「危険」を含んでいるのが、直接的な雇用創出事業なのである。」

そして、著者ははっきりとは書いていませんが、戦後直後の失業対策が日雇いを中心にまさに日銭を稼ぐために行うってことが明確なのに対して、最近は民間企業に委託をしていて、そこで働いてもらっていて、事業にも”雇用につなげる”ような表現があって、その企業で能力を認められて企業に事業が終わっても継続して働く人がいるかもしれないけれど、やはり金の切れ目が縁の切れ目が大半にもかかわらず、働く人にそのわずかながらの可能性を過大に感じさせてしまう。もっと罪ですよね。

そのほか、著者は産業政策的な雇用政策にも否定的ですが、唯一「雇用を発掘すること」(「雇用発掘」、「求人開拓」)は有効だとしています。

「企業の採用ニーズというものは潜在化しやすいという性質を持っている。実際にハローワークに来ている求人や求人メディアに掲載されている求人などは、企業の求人ニーズの一部にすぎない。よほど切迫しない限り公募によって求人をするということはしないものなのである。そこで「発掘」「開拓」という活動が意味を持ってくる。」
「ハローワークの求人開拓を担当する職員を増員するなどの方法は有効であろう。もちろん民間の求人ビジネスも、不況期こそ求人開拓にエネルギーを注がなければならない。」

後半の部分、賛成ですが、その前提として企業、特に中小企業の経営者の方が、人材獲得の考え方を点検するってこともあるのかなと。
例えば、一人、二人の採用だから、知人の紹介で・・と思わずに広く人材を求めてみる・・自社に合った求人方法は何かを考えてみる。

それは手間のかかることだけれど、人材ってそれだけする価値があるのでは?

労働問題的に言えば、経営悪化やその他の理由で会社を辞めざるをえない人たちが、スムーズに転職できる場がたくさんあって欲しい。
転職市場のようなものが整っていれば、倒産に怯えながら働いたり、無茶苦茶な労務管理にノーが言える。

でも・・「転職市場を!」と言うと、そんじゃ経営者が社員を解雇しやすくなる・・なんて言う人が・・・

労働・雇用問題・・継続的に考えていきます!


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